Eighter -Blindness Wizard-
16ther 〜怨念の魔王拳強襲 B〜



#3
 ある日、與鷹(よたか)の元に一通の果たし状が届く。
 それは與鷹(よたか)に一方的に因縁をつけている相手、天宮裕(あまみや・ゆたか)であった。
 富山県、剱岳
 ……それは日本では数少ない氷河の現存する山であり、(ゆたか)が指定した場所はそこだった。
梓與鷹(よたか)「やれやれ、まさか奴がここを選ぶとはね……」
 感慨深く呟く與鷹(よたか)。
 それもそのはず、そこは双狼拳(そうろうけん)の使い手が修行のために訪れる場所だったからだ。なぜ、双狼拳(そうろうけん)を魔道に貶めた
(ゆたか)双狼拳(そうろうけん)の聖地とも言えなくもないかもしれない場所を選んだのか、疑問は尽きない。
※ってか、『言えなくもないかもしれない』ってなんなんだよ!
與鷹(よたか)「しかし、なぁ……」
テノ「だる?」
 今、與鷹(よたか)が頭を悩ませているのは目の前に居るテノである。
 何故か、テノがついてきたのだ。危険だからといっても頑として聞かず、しぶしぶ與鷹(よたか)が折れてテノを連れて行
くこととなったのだ。
與鷹(よたか)(こんなナリでも魔導書娘……と、言ってもアイツは納得しねぇんだろうな……)
 少女を連れて挑むとは余(ゆたか)かぁ、えぇ?ウチの娘のためならば俺はもしかしたら貴様を斃すこともできるかもし
れないとか言うつもりか!などとキれないかが目下の心配事だ。
 だが、悩んでいても仕方がないため、與鷹(よたか)は諦めて指定された場所へ足を運ぶ。
 と、その前に、とりあえず危ないから隠れていような……と、テノを諭してみる與鷹(よたか)天宮裕(あまみや・ゆたか)「フッ、與鷹(よたか)、臆せずに来たようだな!」
與鷹(よたか)「いや……」
 お前も懲りない奴だよな……と軽口の一つでも言おうかと思った與鷹(よたか)だが、(ゆたか)から放たれる尋常じゃない気迫に
気圧されて何も言えなくなる。
與鷹(よたか)(な、何だ、この気迫は!?)
 ただ、復讐に燃える(ゆたか)なので無理なからぬことかもしれない。
(ゆたか)「今日こそ貴様は俺の前に砕け散る!」
 ズビシッと指を突きつけて(ゆたか)が叫ぶ。
與鷹(よたか)「……それはまた、随分な自信だな……」
 その自信は一体どこから出てきているのか……情報が少なすぎて何もわからない。
(ゆたか)「まぁ、とりあえず、死ねやぁ!狼牙砕(ろうがさい)!」
與鷹(よたか)「殺されてたまるかよ!狼牙砕(ろうがさい)!」
 ゴドガッ
 叫ぶと同時に飛び掛かり、防御を無視した拳打をお見舞いしてくる(ゆたか)與鷹(よたか)も負けじと同じ拳打を以てして応戦
する。
與鷹(よたか)「ハッ!幻狼襲(げんろうしゅう)!」
(ゆたか)「ぬぐあっ?!」
 拳と拳とが激突した瞬間には次の行動に打って出る與鷹(よたか)。闘気の塊が(ゆたか)を吹き飛ばす。
(ゆたか)「チッ」
 ザガガガガガッ
 受け身を取りつつ距離を置き、與鷹(よたか)を睨み付ける(ゆたか)(ゆたか)「だが、そうでなくては潰し甲斐がないってモンだぜぇ!」

#4
(ゆたか)「ハァアア!邪狼群憑(じゃろうぐんひょう)!」
 ズゴオオッ
 黒い気を身に纏いパワーアップを図る(ゆたか)。
 この技こそ、双狼拳(そうろうけん)を魔道に貶めるために封印されてきた魔拳である。
(ゆたか)「死ぃイイにさらせぇエエエッ!虐狼魔覇(ぎゃくろうまは)!」
與鷹(よたか)「殺されてたまるかよッ!神狼九断(しんろうくだん)!」
 ゴウンッ
 ドガガガガガガガガガッ
 上空を舞い、そのまま重力加速をつけて食い千切るが如く拳打を繰り出す(ゆたか)に、刹那の瞬間に九回の拳打をお見
舞いして応戦する與鷹(よたか)(ゆたか)「うおおおお!」
與鷹(よたか)「はあああっ!」
 まぁ、だが、常識的に考えればたかが一撃如きで九連撃を敗れるとは思えないわけで……
(ゆたか)「ぐっ……このっ……」
 拳撃に競り負けた(ゆたか)は再び離脱して距離を置く。と、同時に次の攻撃を繰り出す
(ゆたか)「ハァッ!戮狼戴天(ろくろうたいてん)!」
與鷹(よたか)「無駄だッ!神狼九断(しんろうくだん)!」
 繰り出した拳打から放たれた闘気が狼の顔の形を成して與鷹(よたか)に襲い掛かるも、再び刹那の瞬間に九回の拳打を叩
き込んでそれを打ち砕く與鷹(よたか)與鷹(よたか)(アイツの力は以前とそれほど変わってないな……)
 優れた拳法家ならば、拳を突き合わせただけで大体相手がどんな実力か分かるものだ。
 そして、與鷹(よたか)は今の(ゆたか)の実力を既に見抜いていた。
與鷹(よたか)(だとすると……)
 疑問が浮かび上がってくる。今の(ゆたか)の実力では與鷹(よたか)を打倒することは叶わないはずだ。
 では、何故與鷹(よたか)に果たし状を叩きつけてきたのか!?
 よもや、心を入れ替えて潔く死合の果てに死を受け入れるなどという心境が(ゆたか)にあるとは思えない。
與鷹(よたか)(一体、何を隠しているんだ?奴は?……まさか!?)
 ここで與鷹(よたか)はハッと気づく。
 人の心の隙間に付け入り、唆し、そして、最終的には使い潰すその存在を……
與鷹(よたか)「お前まさか……変な子供がやってきて、何か取引に応じたとか……そんなことはあるまいな?」
(ゆたか)「ハァ?何言ってんだてめぇ……子供だぁ?」
 場違いな黒き遺物(ネガティヴ・オーパーツ)、その上位存在たる七罪塔(しちざいとう)の名を告げたところで伝わるわけがない……だから、與鷹(よたか)七罪塔(しちざいとう)
の身体的特徴とかを伝えて問いただしてみるしかできないのだ。
(ゆたか)(まさかコイツ、アレのことを知っているってか?!)
 そして、(ゆたか)(ゆたか)で別の事を思い浮かべ、驚愕していた。
(ゆたか)(おい、ウェル、まさかアイツは俺が新たに手に入れた力のことについて何か知っているのか!?)
ウェル(あ〜、うん。そね……)
 だが、そのまましばらくたっても何も返事が返ってこない
(ゆたか)(いや、答えろよ!)
ウェル(あ〜、うん。そね……)
 これでは埒が明かない……
 果たしてこのまま二人はアン〇ャッシュ的なすれ違いコントを続けることになるのか!?
※どんなだよ!

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